【補足説明】「営養」の表記について


「営養」の表記の件、下記の通りご説明致します。

 

中国文学者の高島俊男氏の「漢字雑談」(講談社現代新書2013年)p.24に「営養・栄養」という一節があります。

 

その大意を著者(=このウェブサイト開設者の自称。以下、同じ)なりに要約しますと、次のようです。

 

・明治以降nutritionの訳語として「営養」「栄養」両方の表記があり、国語辞典的にはどちらも許容されている。

・明治時代には「営養」が主流であり(漱石なんかは「営養」と書いているそうです)、大正以降は「栄養」が主流に逆転した。

・中国語では(nutritionの訳語としての用法は)「営養」ほぼオンリー。

・確かに古典漢籍に「栄養」という語はあるが、意味が全く違う。これは、学問をして官途に就き、立身出世して親に良い暮らしをさせて親孝行を尽くす、という意味。

・高島氏自身は中国文学者なので、中国語文献に馴染んでいることから(nutritionの訳語としての用法は)「営養」派。

 

これを読んで、著者は高島氏のファンなので「なるほど、そんなものか」と思って「営養」表記に従った次第です。

 

(漱石は直接知りませんが、著者の手元の範囲だと團伊玖磨氏の「続々パイプのけむり」朝日新聞社(昭和52年文庫版)のp.53「髯」の一節に「営養」という表記があります=原文は旧字体です)

 

但し意識して変えたのはこの「営養」表記くらいなものなので、他の表記では高島氏の用法と食い違っていることがあるかもしれません。

 

なにぶん個人の趣味嗜好で書いているものなので、他にも固有名詞や外来語の表記など、首尾一貫していない用法も多々あるかもしれません。

 

この点予めご容赦下さると幸いです。